これは、JL4CVB/3が10MHzの担ぎ上げ移動を軽量化するために様々な工夫を行っているうち、いつのまにか手段が目的になってしまったという情けない記録を綴ったものであります。これがこれで楽しいんだ(爆)。
移動運用の軽量化なんてことを考えはじめたのは、多分Ham Journal誌にあったMFJ-9030を見た時からだと思います。これはシングルバンドのCW専用機ですが、とにかく
結局、大学の一般学生用端末(NeXTだぜ!なんでや)からブラウジングが出来るようになったのは'97年の4月。これなら情報も入りやすいだろうと思って色々回った結果、WildernessRadio, Small WonderLabs, Oak Hills Research, EMTECHあたりから軽量のQRP-CW機が出ていることが判りました。ただ、MFJの頁がどうしても見つからず、それで諦めがつかない日々が暫く続きました。
結局、購入の動機付けになったのは、まず JE2CDCさんの頁にたどり着いたこと。日本ではQRPといえばミズホのピコか50MHzと思い込んでいましたから正直言って驚きました。それから、Ten TecのQRP機発売に合わせてOHR, Wilderness Radioが値下げを行ったことです。
こーして、送料込み $119でOHR100を入手することが出来ました(なぜMFJじゃないのかってツッコミは止めてね)。製作に2週間・調整に2週間〜半年を要しましたが、なかなかに遊べる無線機です。詳しくは無線機の頁へ。
PCのジャンク品であるニッケル水素電池を使用しています。(写真追加予定)12V1.8Ahです。OHR100の消費電力が 12V 65mA/700-800mA ですから、CWのデューティーサイクル(符号間の空きがあるため約50%)を考えれば6〜8時間持ってくれると思います。
UPまず「(ラジアルを除けば)場所を取らない」という長所に目を付け、垂直系のアンテナを使いました。
しかし、打ち上げ角が低い→国内との交信が難しい という特徴があり、実用的に使うにはラジアルが何本も必要であるため設営・撤収に手間が掛かるということで、没になりました。現在使っているダイポールを少し改造すればすぐにGPになりますので、マルチバンド化が必要ない場面で再浮上するかもしれません。
ダイポール化するために二本の釣り竿を買ってきましたが、10MHz用のダイポールのエレメント長は約7.2mに対し釣竿は5.4mしかありませんでした。さらにポールは4mしかなかったため、そこからエレメントを2m近く垂らすというのには飛びの面でも、安全面でも問題があります。
そこで、HAM Journal No.89 にある短縮ダイポールに関する記事を元に、フルサイズ比70% の短縮釣竿ダイポールを作成しました。これによってアンテナ系が全て地上4m(ポールの高さです)に出るというのが強みで、またコイルの位置によってインピーダンスを50Ωにするためマッチング回路が不要という能書きでした。
しかしQの高いアンテナは地表の影響を大きく受けるため、4m程度の地上高では頻繁に調整する必要があります。その上に調整の手間がかかるため、移動用には使えないという結論に達しました。
次なるアプローチとして、エレメントの端を上げることを試みました。Vクランプの作成にやや手間取りましたが、
結果は上々。ですが実際の運用となるとトップヘビーであるということと垂れたエレメントが引っかかりやすいという問題に遭遇しました。また7MHzへの浮気が始まったこともあり、7MHzには逆立ちしても出られないこのアンテナは結局ハイバンド好きのフレンド局(たびたび出ているJE5DTS局です)にお譲りしました。14MHzであれば5.4mの釣竿でぴったり収まるため、水平ダイポールとしての活躍が期待されます。
上の短縮釣竿・釣竿Vは 主に理論面から生まれたアンテナで、これは地上高の低さによる損失を避ける目的で作成されました。しかし、絵に書いた餅はあまり美味しくなかったようです(笑)。
結局 ある程度の損失を我慢する形で逆Vに戻ってきたということですが、こうなったらとことん利便性を突き詰めてやれという趣旨で作成しました。特徴としては、
損失が気になる周波数でもありませんが、RG-58/Uを9m使用しています。工夫した点はバランを直付けにしたことでしょうか。FT-114#43にφ1.0の線二本を5回巻いて作成したバランを、SW-55というタカチのプラスチックケースに入れています。50W運用もこれで大丈夫です(というか大丈夫過ぎ)。
また、長さが足りないときのために 3D-2V を10m持参してます。複数人による移動の際には、被りの点から必須となります。 バラン付き同軸ケーブル(左下) バラン内部(右下)バランの最低使用周波数とコアから巻き数と耐入力が判る表を作りました。詳細は「トロイダルコア活用百科」をご覧下さい。
+ Band +-- FT-114#43 --- FT-82#43 --- FT-50#43 --+ | 160m | 6turn,550w 7turn,250w 7turn, 65w | | 80m | 5turn, 1kw 5turn,450w 5turn,125w | | 40m | 3turn, 2kw 4turn,900w 4turn,250w | +------+-----------------------------------------+
この表から、移動用バランにはFT-82#43で十分であることと 私の作ったバランがQRPには程遠いやくざなモノであることがご理解頂けたと思います。ていうか1kwも出したら線が先に燃えるって(苦笑)。
線が燃えるかどうかに関してはこっちの表をご覧ください(トロイダルコア活用百科より)。表内では電流密度を2[A/mm^2]としてますが、SSBやCWなどの間欠使用であれば電流で2〜3倍(電力ならさらにその平方)の許容量を持つそうです。
+- wire diameter -+- max current --- max power -+ | 0.5mm | 0.39A 7.7w | | 0.7mm | 0.77A 30w | | 1.0mm | 1.57A 123w | | 1.5mm | 3.53A 625w | +-----------------+-----------------------------+
1kwでも燃えないかもしれませんね(こら)。線径が n倍 になると、断面積で n^2倍 ・電流-電力で (n^2)^2倍 というわけでn^4倍の差がでてきます。
UP元々はベンチャーのJA1とサーキットハウス製のキットを用いていました。が、特にJA1は半端じゃなく重いので、'97年の4月にWhiterookproducts社からMK-44というパドルを購入しました。
MK-44は、その姿を見た誰もが「玩具やんけ」と言ってしまうようなパドルですが、実際に触ってみると意外に「打てる」パドルで、符号を打つときに両手が必要(片方の手で抑えるため)であることを除けば実用性は十分です。
そして、この中に EmbeddedResearch社のTickというキーヤーICを入れました。TickについてはJL1KRAさんによるレポートが Kiyaさんの頁に書いてあるので詳細は省略しますが、
こうして数十グラムのパドル+キーヤーが完成しました。ただプラスチックケース入りのため、インターフェアによる誤動作には注意してください。特に移動ではロングワイヤーアンテナのようなHigh-Qアンテナが近くにある場合が厄介で、kW級のアンプが並ぶコンテストステーションより厳しい環境となります。マグネチックループアンテナとかになるともっと凄いんだろうなぁ...
最初は TiCK ICの入力ピンに0.01uFのパスコンを入れてましたが これでは耐力不足でした。結局パドルの端子に0.1uFのパスコンを入れることによって十分な耐力を得ることができました。
(1999-01-23) superTiCKに載せ変えました。相変わらず快調です。
さらに、TiCK1で起こった問題(ブザーの代わりにLEDを使うと、ボタンを押したときLEDの点灯・消灯が逆になる。キー入力で戻る)が解決されていたので、圧電ブザーの代わりにLEDを入れてみました。これで静かになりましたが、メモリ入力が意外と難しく、慣れが必要です(苦笑)。
UP大学の無線部でコンテスト中心に活動していたこともあり、ヘッドセットに関してはいろいろと考えを巡らせていました(その中には明らかに受けを狙った失敗作もありました)。
無線部内のコンテストでは密閉度の高いAV用ヘッドフォンと卓上マイクを使ってましたが、移動運用ではパソコン用の安いヘッドセットを使用しています。重量の点で言えばイヤホンを使うのも手ですが、長い間着用できない上に外音が漏れるため止めました。
マイクは、ヘッドセットに付いている物で十分です。SSBには滅多に出ないので(全交信の1〜2%程度)。
(1998-10-20) 最近、折り畳み可能の密閉型ヘッドフォン(Audio technica のATH-F3)を購入して使っています。重低音が響くのでハム音を心配しましたが、通常の無線機なら大丈夫そうです。左右から押さえる力がやや強い気もしますが、これでほっそりした顔に...(をい)。
アンテナがワイヤー系なので ドライバが必要ない(一応、キーホルダーのようなドライバを備えています)のは当然ですが、他に持っていく物を何にするか悩みました。以前は電工ペンチとコテライザー AUTO mini(ガス半田こて)を備えていました。今は電工ペンチの代わりに小型ニッパーとカッター、コテライザーAutominiの代わりに明電舎で見つけた小型の安物鏝(1000円也)を携行しています。
安物鏝の使い勝手は余り良くないので 2泊以上の移動ではコテライザーAutominiを携行していますが、どちらにせよ今まで移動で半田鏝が必要になったことはありません。単独の移動でこれらが必要になる状況はこれからも滅多に無いでしょう。アンテナのワイヤーなんかは予備を持参した方が早いですしね。
ただ、大きさや置いたときの安定性、機能などの点から コテライザーは非常に使いやすい鏝ですので、普段の使用とかコンテスト局に行くときには非常に有用です。コードに引っ張られないのも良いですね。もっとも、衝撃にあまり強くない・ブタン臭い・温度が高すぎる(当たり前だっ)などの欠点もありますが。
↑移動用工具。左の二つが電工ペンチとコテライザーAuto mini。実際に持っていくのは右の9つで、右上に並んでいるのが導通チェッカー・ダミーロード・部品入れ・カッターナイフ。右下は 安物ガス半田鏝(あまり役に立たない)・ニッパー・ライター・簡易ドライバ&コンパス・半田。写真には有りませんが、熱収縮チューブ・ビニルテープ・φ6.5→φ3.5変換コネクタも入れてます。
(余談)切れた線の補修方法として「二本の線を絡めて 外に半田を巻き、ライターであぶる」というやり方が某AT機マガヂンに載ってました。半田鏝持ってない人の為にとか書いてたけど、あーゆうこと(特に半田で巻くというあたり)って単なる素人の逆転発想なのか、それとも....さりげなく熱収縮チューブ使ってたし。
UP工夫の結果、荷物はかなり抑えられました。アンテナから無線機・電源まで合わせて重量約4kg、ロギングにPC(モバイルギア)を使用しても5kgを切ります。
(1998-01-15) 無線機、キーヤー内蔵パドル、電源、ヘッドフォンを合わせてもこの程度の大きさです(TNXJE5DTS)。